1.トップページ完全理論武装

1-3 成果をあげるトップページの鉄則とは?

トップページにやってくる3種類の人とは?

ホームページ制作で重要なトップページの作り込み。今回はいよいよ、成果をあげるためのトップページデザインの条件を見ていきましょう。

ただし、忘れてはいけないのは、トップページは今やせいぜい25%しか入口としないページであること。検索から来る人は多くがトップ以外のページを入口として、サイトに「横入り」してきます。トップページに訪れるのは、すでにその会社やサイトのことを知っている人が多いのです。名刺交換した人が会社概要を確認しに来たり、取引先が地図を見に来たり。採用情報を見たい学生やIR情報に関心のある投資家など、「行き先のはっきりした訪問者」が多い、ということを念頭に作成しなければなりません。

多くの会社では、「うちのホームページにそんなにリピーターがいるかな」といぶかしく考えていますが、現実にはトップから来るのはリピーターが多いのです。

B2BでもB2Cでも、有名企業でもそうでなくても、トップページを訪れるのは次の3種類の人だと考えてください。

1)初めてホームページに訪れる人
2)「行き先」のはっきりしている人
3)何度も何度もサイトを訪れている人

では、順番にこの人たちに向けたトップページの要素を見ていきましょう。

初めてホームページを訪れる人

ホームページを初めて訪れる人にも、「すでに会社のことを知っているけど、ホームページに来るのは初めて」という場合と、「検索などからまるっきり初めて訪れた。会社のことも全然知らない」という場合があります。会社名で検索してトップページを訪れる人は、前者であることが多いでしょう。(何度も会社名で検索して来るリピーターもありますがそれについては後ほど)。

トップページに会社名以外の言葉で検索して訪れるのは、あまり多くありません。トップページはたいてい、多くのコーナーにリンクしなければいけない、役割の多いページです。キーワードがたくさんあるため、1つのキーワードについては中身の薄いページになるのが普通です。画像が多い上に、しかも他のページからのリンクテキストは「ホーム」という言葉だけ、なんてことになっている。これでは会社名以外の言葉で検索された時にトップページが紹介される、というのは難しいですね。

これを解決する1つの方法は、トップページを1つのキーワードだけでSEO的に鍛える、ということがあります。新米ウェブマスターにとっては、トップページをどの言葉でSEOすれば良いか、見定めるのに時間がかかるでしょう。これは「総務」の人に聞くのが一番。「うちの会社のホームページに来てほしい、会社名以外の検索キーワードは何でしょう?」。総務の人なら、全体を見渡して、ある程度客観的に重要キーワードを教えてくれるでしょう。営業の人だと、自分の扱い商品が一番大切なので、どうしてもそれに引きずられます。

会社名以外の言葉で検索させるために

トップページのページタイトルには、いろいろ書かないこと。

 山田産業株式会社のホームページにようこそ!

これだと、会社名で検索されないと紹介されないトップページになります。

 山田産業株式会社 | 家具、椅子、ダイニングテーブル、ベッド、書棚、学習机なら山田産業

いろいろ書きたくなる気持ちは分かりますが、このページタイトルには13単語もあって、1つの言葉の重みは「1/13」にしかなりません。「山田」と「産業」だけが「2/13」の比重なので、結局会社名で検索されやすいトップページになります。会社名で検索してもトップページが紹介されない悲しいサイトもあるので、それよりましかもしれませんが、例えば「家具」という言葉でいきたいなら、これでは損です。

 家具ひとすじ80年、家具のことなら山田産業株式会社

これならかなり良いですね。

1)「家具」が先頭にあるので、重視されやすい
2)「家具」が2回出てくるので、重視されやすい
3)「山田産業株式会社」はちゃんと出てくる

各ページからトップページへのリンクを作る場合、「ホーム」や「トップに戻る」ではなく、

 家具の山田産業トップ

という文言でリンクすれば、さらにトップページと「家具」の結びつきが高くなります。

外部サイトからのリンクも増やし、家具という言葉でトップページに検索訪問者が来るようにしていけば、トップページに初めて訪れる人の中に、「山田産業は知らないが、家具で検索して訪れた」という初訪問者が増えることになります。

会社名以外の検索訪問者が来たら…

このタイプの初回訪問者は、当然「家具」を探しているわけです。1つの言葉でSEOをしたら、それを受け止める入口ページにしないと、せっかく検索して訪れても「あれ、あんまりぱっとしないサイトが出てきたな」と思われて、すぐに帰ってしまいます。この訪問者にはどんなトップページを見せれば良いでしょう?

1)この会社は、家具に強い会社だ、ということを分からせる
2)見たい家具の絵が掲載されている
3)見たい家具についてのリンクボタンが複数、すぐに見つかる

この3要素が必要です。会社のことをまるで知らない人が来るので、ただ「山田産業株式会社」とロゴが載っていてもダメです。「家具ひとすじ80年 山田産業」といった文言を目立つように掲載して、このサイトには自分が探している「家具の良い情報」がたくさん出ていると理解させることが不可欠です。

リンクボタンも、「製品情報」ではダメです。山田産業にどんな製品があるのかまだ知らないので、興味が湧かないのです。製品ブランドをたくさん持っていても、「ルミエールシリーズ」なんてブランド名だけのリンクボタンでは、こうした訪問者には何のことだか分かりません。残念ながら、理解できないボタンをクリックする人はほとんどいないのです。

 椅子 テーブル 学習机 ベッド

といったリンクリストを出しましょう。また、

 家具選びの賢い方法とは?

といった役立ちそうなコンテンツを強調して、「初めて来た人はこのボタンをクリックすれば良いですよ」ということを分かりやすく伝えましょう。だったら、

 初めての方のために

というボタンはどうでしょう? これは何が書かれているか分からないので、クリック率は上がらないと考えるべきです。

SEOに対しては、その対象キーワードに対応したページにしなければ、たくさん来てもたくさん帰るだけのページになるのだ、と考えておきましょう。

名刺交換した人が初めて訪れた場合

特にSEOや検索広告を実施していないサイトでは、取引先の訪問率が高いわけですが、名刺交換などから来た「この会社のことは(少し)知っているが、ホームページは初めて」という人についてはどんなトップページである必要がありますか?

 家具ひとすじ80年 山田産業株式会社

という「専門家」表示はこのタイプの訪問者にも重要ですね。このタイプの訪問者は、会社について確認したいことが多いからです。そこで、トップページでは会社情報を分かりやすく掲載します。この場合も単に「会社情報」といったボタンではなく、

 会社情報
  山田産業株式会社は、1925年創業以来80年
  家庭向け家具ひとすじに歩んでまいりました
   2006.7.5 おかげさまで80周年
   2006.6.10 創業以来の最高益を記録

など、「特長が伝わる」「ニュースを伴っている」「良い会社だと分かる」といった要素をつけて強調します。トップページには何か1つ「自慢」が必要です。

社員に聞いても自慢してくれない…

実は社員は、身近すぎて、会社のことを自慢しません。「うちの会社はほんとにダメだ」なんて言い放つ人がいるぐらい。ウェブマスターは客観的に複数の社員に取材したり、社史、会社案内パンフレット、求人広告などを読んで、どんな小さなポイントでも良いですからその会社の自慢をつかみ取りましょう。

激しい競争を生き残ってきた会社に、良いところが1つもない、ということはありません。商品やサービスが誰かに選ばれているのです。「ただ安いだけ」「この地域にはうちしかないから」「下請けですよ、下請け」なんてネガティブに語る社員も多いかもしれませんし、それも事実かもしれませんが、本当に悪い商品なら安くても誰も買わないし、下請けの厳しい状況の中で磨かれてきた商品には強い競争力があるはず。ホームページは、

1)取引先の拡大を目指す
2)今の取引先に別分野の商品を買ってもらう(クロスセル、アップセル)

ことを実現するためのものですから、しっかりポジティブに打出しを考えましょう。

デザイン上の配列としては左にユーザー、右に取引先

トップページには、2種類の初回訪問者が同居します。「家具」で検索したエンドユーザーと、名刺交換から来た取引先。デザインを考えると、どっちつかずになりがちですね。

一般的な傾向としては、エンドユーザーは直帰しやすく、取引先は自分が見たい情報がはっきりしているので直帰は少ないもの。エンドユーザーは自分がクリックしたくなるボタンがすぐに見つからないと、帰ってしまいがち。「すぐにボタンが見つかる」ということは、ページの左上にエンドユーザー向けのボタンを配置する、ということになります。

ホームページは横書きの世界なので、訪問者の目は左側を重視するのです。取引先は必要性があってサイトを訪れているので、ボタンがページ右側にあっても見つけてクリックしてくれるでしょう。

「行き先」のはっきりしている人にはどうする?

取引先や、採用情報を求める学生などは、自分がクリックすべきボタンが何か、良く分かっています。「会社情報」「採用情報」「IR情報」などのボタンですね。こうした人には、先にも書いたように、自慢を伴った分かりやすいボタン構成が効果的です。

 会社情報
  山田産業株式会社は、1925年創業以来80年
  家庭向け家具ひとすじに歩んでまいりました
   2006.7.5 おかげさまで80周年
   2006.6.10 創業以来の最高益を記録
  >> 業績情報 >> 事業所の地図
  >> 会社案内資料の請求はこちらから

 採用情報
  家具のプロになろう!
  >> 2006年度新卒採用情報
  >> 新卒採用エントリー
  >> 中途採用情報 [ 設計(CAD利用), 営業 ]

など、情報を見えやすくして、ページの右側においてもしっかりクリックされるトップページにしてください。これならコンパクトだし、デザイン的な処理には困らないはずです。

こうした情報をつかみとりやすい、という点では、制作業者がホームページ制作をするよりも、ウェブマスターとして内部に入って作成する方が有利なのです。

行き先のはっきりした人へのメッセージ

問題は、行き先のはっきりした人は「自分の見たいところしか見ない」こと。

例えば、採用情報を見る学生には、週休2日とか採用情報の内部だけではなく、環境への施策とか、最も力を入れている製品分野などをしっかり理解して応募してもらいたいものですね。ところが、多くのサイトでは、「採用情報」に移動してしまうと、「エコロジー」「ユニバーサルデザイン」「コンセプト」といった別の重要コーナーが見えなくなってしまう、移動しにくい、というサイト構造になっています。

取引先が「会社案内」へ移動すると、会社概要や事業所の地図ばかり見て帰ってしまい、やはり「エコロジー」などの重要メッセージが伝わらないものです。

トップページはこうした「すぐに別のページに移動する人」に対して、会社のメッセージを最低限伝えるという役割もあるのです。

例えばエコロジーを大切にしている会社だったとして、昔は樹木や海のイメージ写真を使ってトップページを作り、何となく環境に優しそうな雰囲気のサイトを作ったりしましたが、それでは先を急ぐ「すぐに別のページに移動する人」には何も伝わりません。そうしたイメージ手法は今やあまりにも陳腐で、退屈。見慣れてしまったので、プラスイメージも個性も感じさせることはできません。

大切なのは、具体的なメッセージを与えることです。短時間で分かること。例えば、

 1年で54本の木を植えました。
 7割の商品がユニバーサルデザインになりました。

といった形で、事実を元にした最新情報という形で、会社からのメッセージを伝えることです。一般のニュースとは別に、バナー型の画像にして、大きく伝えると良いでしょう。

できれば、会社情報からも採用情報からも、このバナーをクリックできるように、ナビゲーションに組み込むようにしておきたいものですが、まずはトップページでこれらのメッセージが伝わるようにすることです。

何度も何度も訪れている人にはニュース

長いつきあいの取引先、エンドユーザーの中には、お気に入り登録をして何度も何度もトップページに訪れる人があります。そうしたヘビーリピーターはトップページを見て、「今日はあまり新情報がないな」と感じたら帰ってしまうものです。

そうした訪問者は大変ありがたい顧客で、何度も直帰しても、また何度も訪れ、新情報が出ていたらクリックしてくれます。だから、普段そうした人が直帰している分にはあまり問題にすることはありません。逆に言えば、ニュースをしっかり打ち出すことで、そうしたリピーターの期待に応え、良くページを見てくれるサイトになるのです。会社への信頼度も高いので、資料請求や売上にも結びつきやすいもの。これらのリピーターは大切にしましょう。

となると、トップページにはニュースを強調すべき、ということになります。しかし、デザイン的には、トップページにたくさん掲載されたニュースが扱いにくいのですね。スペースをたくさん使う割に地味で、せっかくの製品情報が押しだされたりして損をします。といって、ニュースを下にすると、ヘビーリピーターがニュースに気付かずに帰ってしまう…。

この解決策は、ニュースを2ヶ所に分ける、ということです。特殊な方法に聞こえるかも知れませんが、

 イメージ
 トップニュース
 レギュラーボタン
 ニュースリスト

という順序で積み重ねれば良いだけです。トップニュースは1項目か2項目だけ、「ニュースが新しくなったぞ」ということがすぐに分かるように、面積は少なくても印象的なデザインを工夫してください。

トップページの鉄則・役割配置

さて、ここまで、トップページの構造を見てきました。図のように、会社のメッセージや重要な内容が、リピーターにも会社名以外の言葉で検索した初訪問者にもしっかり伝えられるトップページにすることが、トップページ成功のデザイン鉄則です。面積バランスやデザインイメージはもちろんいくらでも変えて会社の個性やあなたのデザイン力を発揮してください。製品のタイプや数によっても変わるはず。この図の原則を守っても、どこのサイトも似たようになる、ということはないはずです。

(2006/5)

次回は、2-1「わざわざ資料請求が増えないように作っている?

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